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定例ブログと宗教法人の労働保険加入勧奨のお話

2025年11月3日

開所からおよそ2月です。

おかげさまで顧問契約及び顧問契約予定も出てまいりました。

お祝いをたくさんいただき、玄関ばかりが胡蝶蘭で満たされ立派になっておりましたが、どうにか経営としても成立しそうです。

まだ開拓中、といった感じではありますが、とりあえずはサイトやSNSでの情報発信は定期的に続けていきたいと思っております。

その一環としてブログにて「宗教法人の労働保険・社会保険」をシリーズ化しています。

10分で全て網羅できます、はさすがに現実的ではないので、テーマを絞って少しずつ進めていく予定です。

ネット上であれば必要事項を検索して辿り着く方もいると思いますので。

個人的には下記の記事もあり、近年は社会保険料削減が選挙公約でも目立つのでそちらが気がかりでしたが、タイトルのように労働保険のほうが急務かもしれません。

社会保障費にどう対応?宗教法人と厚生年金(こちら宗教法人の方は一読をお勧めします)

というのも、宗教法人に対して労働保険の加入勧奨の動きがかなり進んでいるようです。

中には実際に都道府県労働局や労基署、ハローワークから連絡がきたところも少なくないようです。

私の身近な寺院でもありました(ここは数少ないであろうまったく問題がない寺院なので何事もありませんでしたが)。

社会保険については、かつて宗教法人の特殊性からある程度考慮、のようなことがいわれていたようです。

しかし、現在は加入勧奨されているのでむしろ加入しろという主張が明白、堂々と無視を決め込んでいるといずれ手痛い思いをすることでしょう。

一方で、労働保険に関してはそのような宗教法人の特殊性を認めるような記事は見つけられませんでした。

つまり、義務であるものを堂々と放置しているわけです、それは怒られますよね。

調査が進み「宗教法人の9割が義務である労働保険を無視して保険料を支払っていない」などというニュースになれば社会的信頼は失墜します。

昨今の調査については世間の「お前らいい加減にしろよ」の声であるといえるでしょう。

そんなわけで、連載記事でも書きますが取り急ぎこちらでも概要を記しておこうと思います。

まず、前提として労働保険とは労災保険と雇用保険です。

こちらの記事でも書きましたが、雇用保険が関わるのはおそらく大寺院のみです。

一般の中小寺院には関係はまずないですが、毎日外部から特定の方が来てくれている、のような場合は雇用保険加入が必須の場合もありますのでご注意ください。

一方、労災保険は規模を問いません。

率直に言いますと、以下のケースであると、労働保険の調査でひっかかる可能性が高いです。
①親子二代、住職・副住職世帯で運営
②住職(子)とその妻、及び住職母で運営
③②と似た形で先代住職夫妻がまだ在寺しており給与を受けている
④定期的に外部の方に留守番や代理法要をお願いしている
⑤定期的でなくとも近年④のことを依頼したorすることがある
⑥お手伝いさんが来てくれて本堂や墓所の清掃をしてくれている

何がマズいのか、先に労災保険の条件を見てみましょう。
・人を一人でも雇用する場合に加入必須
・常時雇用はもちろん、単発の雇用でも加入
・基本的に任意選択ではなく義務
・費用は全額法人負担
・ただし、役員・同居の親族(生計同一)・家事使用人については加入不要
※別居でも仕送りや毎月○○円を援助などは生計同一に含まれますが今回は「同居の親族」なのに注意

これを踏まえて考えますと
①のケース
副住職は成人していれば住職と生計同一の可能性は低いです、所帯持ちであれば尚更です。
近年は同居ではなく副住職側が通いのようなパターンも見られますが、こちらは完全に「同居」ではありません。
副住職は役員といえますが、その妻は法人職員であれば労災加入対象です。
保育園入園などを考え職員にしている方もいるようですが、「被扶養の壁」とセットで考える必要があります。

②のケース
先代が亡くなる・隠居するなどで住職を退き、子が住職でその妻及び母が職員の場合です。
こちらも生計同一でない可能性が高いと思われますので、妻は問題ないとしても母が給与を受けている場合には労災加入対象となります。

③のケース
先代住職が退くと同時に役員でなくなっている可能性があります。
その場合は先代夫妻が給与を受けていると労災加入対象となります。
生計同一という可能性も低いと思われます。
隠居してまったく関りがなければ当然加入の必要はありませんが、施設入居などの場合を除きそのようなケースは少ないと思われます。

④のケース
兼業の方などで多いですが、毎週○曜日に留守番を頼んでいる、月に1~2回ほど回忌法要の代理をお願いしているといったパターンです。
さすがに無償で呼びつけることもないでしょう、おそらく何らかの謝礼を出していると思いますが、それは法人からの給与にあたります。
定期的でなくとも、特定の方に決まって声掛け、のようなパターンであると「常時雇用」の扱いになるようです。
そうなると、帳簿類の調製も必要となってきますので、その面でもペナルティが科される可能性があります。
実態で見られるようですが、呼ぶたびに労災保険の加入が必要と思ったほうがいいでしょう。

⑤のケース
葬儀が重なった場合に部内寺院や法類などに片方を依頼するようなパターンです。
これも法人から給与が出る以上、被雇用者になりますので労災保険加入が必須です。
日雇バイトのようなものであっても世間一般では労災保険に加入しています。
単発派遣のような会社で登録して働く場合もその派遣元がまとめて加入しています。
事故の可能性が限りなく低い事務職であっても加入することになっています。

⑥のケース
いわゆる「家事使用人」というものですが、そのくくりに収まっているかの話です。
寺族の食事作りや洗濯、庫裡部分の清掃といった家事代行のような仕事を依頼している分にはその範疇なので問題はありません。
ただし、完全に寺院部分、たとえば、本堂や墓所の清掃のような業務を依頼しているとそこから外れてしまいます。
すなわち、法人の従業者としての扱いとなり労災保険の加入が必須となります。
実態で見られますので業務内容についてはしっかりと限定しておく必要があります。
なお、区分が難しい共用の玄関、門から寺務所の入り口部分のような箇所の清掃などについては家事使用人の業務範囲に認められるとのことです。

ありがちなのはこのくらいでしょうか。

いくら必須とはいえ今まで払っていなかったものを払えといわれたら嫌ではあるでしょう。

さらに、中小寺院では経営を圧迫するのでは、というような不安もあると思います。

では、肝心の労災保険料の計算方法を見てみましょう。
「1年間に労働者に支払った賃金の総額×労災保険料(宗教法人は3/1000、0.3%)」
です。

たとえば、単発の葬儀を依頼して謝礼として5万円を支払った場合
「50,000円×3/1000=150円」
となります。

これに確定時に一般拠出金(総賃金の0.02/1000、0.002%)が加わりますが、5万円なら1円、合計で151円です。

年間10件を各5万円で依頼したとしても1,510円です、これが経営を圧迫するわけもありません。

月給制の場合、たとえば、上記②のパターンで実母に月20万円を支払っていた場合
「200,000円×12×3/1000=7,200円(+48円)」
1回飲みに行くのを我慢する程度の金額です、ちなみに年額です。

この額面をケチって社会的信頼を失うというのは正直言ってばかばかしいレベルの話といえるでしょう。

さらに、加入を怠っていた場合には追徴や刑罰(6月以下の懲役or30万円以下の罰金)がありますし、法人名公表もあります。

また、事故が起こってしまい補償が出る場合、その費用の徴収が行われます。

金額とデメリットの比率があっていません。

一方、労災加入のメリットも大いにあります。

業務上の負傷、それが大事となり障害が残ったり万一死亡したりした場合、補償が行われます。

遺族・障害年金や一時金、療養補償などです。

たとえば、本堂で天蓋を磨いていた際に脚立(使用方法にもよりますが)から転落した、などは業務上の事故になります。

他にも、葬祭場へ移動の際に飲酒運転の車に追突された、といった場合も補償があります。

このあたりの話は本編で詳しく紹介しますが、働く上では重要な話であると思われます。

手続きとしては2パターンあります、詳細は連載のほうに記しますがざっくりといいますと
・完全に単発で以後は人に依頼する可能性がほぼゼロの場合
加入→終了後の確定精算(この際に一般拠出金の分を上乗せして支払います)→万一次があれば再度加入

・ある程度外部に依頼する可能性がある、実母や副住職妻のように常時雇用がある
加入→1年(4月~翌3月)の見込み分で支払い→年度更新(6月1日~7月10日)の際に確定分で精算+当該年度分の見込み分支払い→次の年度更新

自力でできないこともないですが、法改正や正確性について考慮すると専門知識のある社労士への依頼が無難かと思います。

税務関連に関しては税理士に依頼しているのと同様のことです。

既にいる税理士や弁護士に依頼したいと思うところでしょうが、労保・社保関連の書類作成や提出代行といった業務は社労士の独占業務となっています。

税理士などに依頼しても対応することはできません、万一手出しすると罰則がありますし、それぞれの会から処分が下る可能性もあります。

調査が来ていないから大丈夫と高を括っている方もいるかもしれませんが、いざとなって慌てて、よりは事前にしっかり対応をしておかねばなりません。

調査の話が来て焦っている方も、自分のところは大丈夫かと不安な方もぜひ一度ご相談ください、診断だけでも承ります。

かなり諸々急ペースで進んでいるようなので、早目の対応をご検討ください。

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