労働・社会保険に関することのほか、社労士試験突破時の勉強法、事務所の日常などについてもつぶやいています。 よろしければご一読ください。
~番外編~宗教法人課税の前に…
2026年2月14日
研修のための動画を視聴しようとPCを開いたところ、なぜか当該サイトにアクセスできないため、タイムリーネタをひとつ。
過日、宗教法人課税のニュースが目につきました。
SNS等では様々な意見が出ているようですが、ひとついえることは固定資産税の課税強化に至った場合は私のいる寺は成立しなくなります。
都心部の小規模寺院には厳しいお話ですので、さすがにいきなりスタートできるようなことでもないかとは感じています。
とはいえ、境内で行う一般的な駐車場や外部向けのほぼホテル業のような宿坊に関しては収益事業としての線引きは必要かと思います。
また、法人格の売買や名義貸しによる脱法的な行為も問題になっているようです。
しかし、このようなことを行っているのはごく一部、少なくとも仲間内ではこうした明確にアウトなことをやっている者はいません。
そうはいっても、こうした報道が出れば宗教法人全体に不信感を抱かれるのも事実、よく考えてほしいものです。
さて、このような議論が出てしまう前に我々も襟を正さねばなりません。
とりあえずは線引きも曖昧になっておらず、明確に納める必要があるものには対策をとる必要があります。
社労士のテリトリーにあるものは、たびたび記事に出している労働保険と社会保険です。
こちらははっきりと宗教法人にも加入義務があるもので、今までスルーできてしまっていたのも別に特権があるわけではありません。
現在都内で行われている労働保険の加入勧奨も義務であるから実施されているものですので、しっかりと対応する必要があります。
ここでゴネたりごまかしたりしていれば、義務であるものにも従わず優遇だけ受けているという悪印象を持たれうるでしょう。
厚生年金で見てみても、代表役員は法人の従業者として加入義務があります。
しかし、国民年金保険料を支払っているからそれで十分と考える方もいるかもしれません。
では、実際の額面で比較してみるとしましょう。
例として「40歳の夫婦(妻の年収130万円未満の被扶養)で法人からの給与が40万円の世帯の1月分(令和7年度)」としますと
・国民年金保険料→17,510円×2人=35,020円
・厚生年金保険料→個人負担37,515円(法人負担分を含めると75,030円)となります
国民年金保険料は厚生年金保険料より個人負担でもやや少なく法人負担分を含めると大幅に低くなります。
厚生年金に加入していない分、将来のリターンが少なくなるというデメリットはあるものの、外部の目からすると保険料を不当に下げているとみられる可能性もあります。
特にこの社会保険料に関しては近年頻繁に話題となる事柄ですので、一番不満を感じている現役世代からのイメージは格段に悪くなる恐れがあります。
まして、社会保障の3つの機能には「所得の再分配」というものが挙げられます。
言ってしまえば広義の「布施」にあたるものですので、それを疎かにするわけにもいかないでしょう。
まだこれらの問題はあまり表面化していません。
まだ、というだけであって、調査が行われ未加入率などが公表されれば明確な数値として世間一般に悪印象を与えます。
先の課税の議論に関しても一気に世論は傾くでしょう。
一部、調査に対してぞんざいな対応をされたという話も聞きますが、そうした行為も不信感を抱かせかねませんので控えるべきです、現代風にいえばSNSなどで拡散されかねません。
まずはこうしたはっきりとNGなところを潰していく必要があります。
とはいっても、色々と素人が完璧に行うのには無理がありますし、負担もなかなかのものです。
そのために豊富なアウトソーシング先のプロフェッショナルがいます、税務に関しては税理士に頼ればいいですし、社会保険は社労士を使えば安心です。
詳細な話は連載記事で引き続き紹介していきますので、まずはしっかりと足元を固めつつ信頼を保てるように心がけていきましょう。
定例ブログと昨今の労働保険加入勧奨のお話
2026年2月3日
いつの間にか節分ですね。
毎月何となく数本のブログ記事を書けていたのですが、1月は忙しく放置してしまいました。
寺でいえば修正会、社労士会でいえば賀詞交歓会、そしてプライベートでの新年会と付き合いが多かったのですが、これらはスポット的なものですね。
とはいえ、体重やらコンディションはイマイチで、道場に行けば昨年以上にバテている情けなさ、アラフィフは取り戻すのにどれだけかかるかわかりません。
そんなイマイチな近況ではありますが仕事は増えました、ありがたいことです。
表題にもある労働保険加入勧奨については都心部分から段々と周辺に広がっているようです、おかげで相談もちらほらと。
労働基準監督署は司法警察の役割を果たしますので、あまり不遜な態度をとったりいい加減な対応はしないのが吉です。
体感、この加入勧奨はそれなりの成果が出ているのではと推測されるので、次第に周辺自治体にも広がっていくのではないでしょうか。
早目の対応を推奨します、ご不安な方、診断が必要な方はお問合せください。
以前、税務やら何やらを全て住職が独力でこなすのは無理だしストレスも凄いのでアウトソーシングを活用したほうがいいという話を同業(寺)の方としましたが、私もそう思います。
実際、私も税務は基本的に税理士の先生に投げていますし、コスト的に見てもそこまで過剰な負担であるとは思いません、むしろ安心と常に更新されている専門知識に乗れることを考えれば割安だと思います。
そうしてできた時間は自己研鑽なり家族サービスなり、多忙な方であれば休養に使えばいいわけで、COLの向上にもつながることでしょう。
さて、労保・社保に関して書いていると何だか不安になったり、中には脅されているのではなどと思う方もいるかもしれません。
しかし、私自身は現在の檀信徒制度については継続していってほしいと強く願っています。
基本的に私たち寺生まれは生まれたときからずっとそこに住んでおり、お参りいただく檀家の方々とは長い付き合いです。
私の寺は仲良くやれていると思っており、葬儀や回忌法要があれば共に悼み、進学や結婚といった慶事があれば共に喜び、親しい親戚のような関係を築けていると感じています。
人間関係が希薄になる昨今、こうしたつながりは非常に良いものであると思っております。
また、折に触れて仏教に触れること、これはモラル形成にも非常に重要な効果があるといえるでしょう。
やはり、世界で見ても宗教は道徳心のベース、それの一端を担う宗教法人の役割は決して軽いものではないと思います。
それが法令違反やら社会保険料のごまかしやらで信頼を失墜させ人々の心を離れさせてしまうのは、この先非常に悪い影響を起こしうることです。
中には「今まで何も言われなかったのにどうして急に」などと感じる方もいるかもしれませんが、逆に今まで野放しだったのはただのラッキーです。
目の前の道路を時速200キロで走っても捕まらないこともありますが、それと同じです。
特に社会保険料に関しては選挙もあり毎日耳にする話でもあります、何かアクションが起こってくる前に対応をご検討ください。
新年のご挨拶と最低賃金のお話
2026年1月4日
新年あけましておめでとうございます、本年もよろしくお願い申し上げます。
寺院のほうもそうですが、書いているタイミングは年明け前です。
公開されるタイミングは三が日も駅伝も終わった月曜日、多くの方は仕事始めになるのでしょうか。
私は始業を少し遅らせていますが半分は私情ですので、急ぎの要件あればご連絡いただいて問題なしです。
年末は24日まで法事があり、30日には葬儀、31に除夜の鐘、年始は年始回り、そして、平日がやってきます。
労基法どうなってるんだという話ではありますが、私は代表役員なので基本的には対象外ではあります。
深夜割増賃金は役員でも除外されないのですが、一応それなりの待遇やそうした事態をある程度想定した給与ということで問題はないようしています。
自分の備忘録のようになっていますが、興味ある方はこちらをご覧ください。
さて、かつて少し聞かれたことをもうひとつ備忘録的に。
毎年概ね10月に最低賃金が発効となります。
寺院ですと寺庭夫人、つまり、住職の奥さんがいるわけで、寺院所属で給与をもらっているケースがあります。
しかし、上記のような感じでその奥様もなかなか大変だったりします。
法要前には本堂から客間から清掃しますし、住職が留守にしていればしっかり留守番をしなければなりません。
留守番も労働から解放されているわけではないので、いわゆる手待ち時間、労働時間カウントになります。
かなり縁の下の力持ちといった重要な役割を果たしています。
清掃時間などは限度はありますが、先の客待ちの状態などを入れると労働時間がとてつもないことになり時給換算すると最低賃金を割るのでは、ということを聞かれたことがあります。
これに関しては厚生労働省の資料にもありますが「同居の親族のみを使用する事業」は除外されています。
一応、使用従属性等の諸条件を見ることになりますが、基本的には適用除外で問題ないでしょう。
そうはいっても、先の通り寺庭夫人もなかなか大変です、無給などというのはもちろん、あまり低賃金というのもどうかと思われます。
感謝の念も込めてそれなりの給与を出した方がよろしいかと思います。
ただし、被扶養の壁の130万円に関しては十分注意を払ってください。
労働時間をしっかり記録し、所定時間以外は住職が電話も来客も対応する、のような形も負担軽減含めて有効でしょう。
また、労災保険でもたびたび出したように「同居の親族」という点についてはご注意ください。
通いの場合で先代夫婦などに色々な寺務をさせていたりするとそちらにひっかかる可能性があります。
業務の諾否の自由の点などから実態判断にはなると思いますが、たびたび出しているように行政も完全放置ではありません、頭に入れておくといいでしょう。
ところで、願生寺では彼岸やお盆以外のお参りの際には事前連絡をお願いしています。
まだ徹底されておらず連絡なしでお参りされる方もいますが、これが基本システムになると労働から解放されている時間は増えるかもしれないと思ったところ、葬儀連絡などはいつあるかわからないので電話待ち時間になってしまいそうです。
なかなか宗教法人の労務管理も難しいですね。
ゼロからスタート 独学社労士RTA 1年半③ ~まずは武器選び~
2025年12月23日
前回は独学といいつつも他を勧めるような内容でしたが、今回はちゃんと独学向けです。
単独でどうやって勉強するか。
当然ながら市販のテキストを利用します、これはいうなればメインウェポンです。
年間を通じてガッツリと読み込むことになりますので、しっかり相性の良いものを選ぶ必要があります。
書店で1000ページ超えの分厚いテキストを見てゲンナリした方もいると思いますが、これをマスターしないと合格は見えてきません、がんばりましょう。
私も教員時代は山川出版社の『詳説 世界史研究』を全部頭にぶち込んでいたものです。
もう3割程度は抜けていると思いますが、このレベルは人間業の範疇ですのでイケます。
私は2回受験しましたが使ったテキストは
1年目→『ユーキャンの社労士 速習レッスン』
2年目→『出る順 | 2025年版 社労士 必修基本書』(LEC)
でした。
ネットで「社労士 テキスト オススメ」などと検索する行為は基本的に無駄です、ラインナップを網羅できるとは思いますが、実物を見てみないと何ともいえないでしょう。
上記は分厚いテキストですが、書店で見ればもっと薄いものもあります。
薄い方が携帯はしやすいでしょうが、当然ながら情報量は少なくなります。
難化が見られる近年の試験ではあまりあっさりしすぎるのも不安と思われますので、求められる知識量はそれなりのものと割り切ってゴツいもののほうがいいでしょう。
では、サブで使ってみるのはどうかと思うかもしれませんが、そんなに何冊も網羅している余裕はないと思われます。
後日紹介する雑誌でフォローというのも手かもしれませんが、メインということを考えると選択肢は自ずと狭まってきます。
これも後ほど取り上げますが、ただマニアックなことに触れまくっているというのも良いとは限りません、重要ポイントやトレンドの把握が重要です。
そういう点であれば大手資格予備校が研究して出しているものにアドバンテージはありそうです。
また、分厚いテキストでも「労働系」「社会保険系」と分離できたりするので、鞄に突っ込むことは十分可能です。
肝心のテキスト内容に関してですが、私は思い立ったタイミング的に一発突破を想定していなかったので、良いチョイスだったと思います。
ユーキャン様の速習テキストは見やすさ、わかりやすさのポイントは高いと感じました。
ゼロからスタートした私としては非常に入りやすく、ある程度のベースはしっかり作れたと思います。
一方で、一部の項目があっさりしすぎ、一般常識のデータが出版時期の都合古い(これも後日触れます)といったことが挙げられます。
ステップを踏む前提の1年目には適していたのは感じましたが、2回目の試験に臨むにはもう一押しと感じるところがあったので2年目は変更することとしました。
その2年目で選んだのがLEC様の基本テキスト。
こちらは前年のものと打って変わってお堅いイメージです。
要点はいい感じに押さえているものの、電話帳のような紙質にびっしりと説明が記されているのは初学者にはあまり向かないかもしれません。
その分、情報の網羅に関しては十分な印象です。
前者もそうですが、同シリーズの問題集というのも存在しているので、そちらとの連携に関してもやりやすさは感じました。
ただ、ある程度の基礎を身につけた上でのチョイスだったので、初っ端から選ぶとすると少し厳しいかもしれません。
しかし、1年で突破しようと考えるなら段階を踏むよりは少しチャレンジする必要はあるでしょう。
易しめな前者をうまくフォローを使いつつという手もあるとは思いますが、目標やコスト制限などと相談する面もあるでしょうから、状況に応じてといったところでしょうか。
さて、同様の大手が出しているガッツリ目のテキストではTAC様を外しています。
別にこれは毛嫌いでもなく、2年目のテキスト選びで二択に入っていました。
選ばなかった理由は1年目のラストに買った書店販売型の模試が難しすぎて合わないイメージがあったためです。
模試についても後々触れますが、『みんなが欲しかった~』に関しては悪くないどころかむしろ良かったと思います、別のものが私には合いませんでした。
一応、開業にあたりこの手の網羅的なテキストはあったほうがいいため、本年版は試しに『みんなが欲しかった!社労士の教科書』を購入しましたが、見やすさも内容も良いと思います。
ただ、ガチ試験勉強には使用していない上、合格できるレベルで見ての話になるので何とも言えないところはありますが。
結局のところ
・実物を見ましょう
・ある程度の情報量は意識しましょう
を踏まえればあとは個人の好みといえるでしょう。
また、テキストには対応する問題集もあります、そちらもセットで印象を見てみるといいでしょう。
問題集についても触れますが、やはりセットのものがメインになると思います。
テキストの対応ページなどがあったほうが勉強はしやすいので、併せてチェックしてみてください。
なお、テキストの費用は高くても4000円程度です。
メインではありますが、もちろんこれだけでの突破は難しいので、予算はもう少し用意しておいてください。
宗教法人の労働保険・社会保険② ~厚生年金と健康保険の加入義務~
2025年12月8日
シリーズ第1回目では大前提として、当ブログで社会保険というと狭義のほう、厚生年金保険と健康保険についてという話をしました。
2回目では引き続き総合的な話から入っていきます。
社会保険料に関しては選挙の公約でもたびたび耳にするので、今まで無関心だった方も「高い」という認識が強くなっているようです。
私も加齢という背景はあるともいえますが、社労士資格をとったことから上記話題を振られることが増えてきました。
そんなわけで、今まで通り何となくスルーしてしまうことは後々大きな痛手になる可能性があります。
世の法人代表は当然ながらその知識を得た上で経営にあたるわけですので、宗教法人の方もしっかり把握しておく必要があるでしょう。
まず、名称は住職でも神主でも牧師でも何でも構いませんが、これらはすべて「代表役員」という扱いです。
私も「宗教法人 願生寺 代表役員 遠藤和成」となっております。
代表権を持つということは「労働者ではない」ということですので、労働保険(労災保険と雇用保険)に関しては加入の必要はありません。
詳細はこちら(厚生労働省)をご覧ください。
しかし、法人役員とはいえ「法人から給与を受けている」という形になるのが基本です。
その面では「労働者としての側面を有する」ということで、先の社会保険に関しては加入の義務があります。
これは私が年金事務所に問い合わせても明言されましたし、日本年金機構のサイトでも明確に加入義務があることが書かれています。
万一、給与という形でないという方は別の問題が発生しているので、記事を紹介しておきます。
①税知識欠く住職が招いた追徴「緩い法」ずさん会計ゆるす(産経新聞オンライン)
②さい銭を生活費にした宮司も…宗教法人の源泉徴収漏れ相次ぐ、5年で追徴税額45億円超(読売新聞オンライン)
給与ではなくお布施や地代といったものをを個人口座に入れている場合は脱税・追徴などの問題が多分に発生します、即座に止めることを推奨します。
というわけで、住職いえども法人から給与を受ける立場が基本であるということについてはご理解いただけたかと思います。
そして、社会保険加入についてです。
住職等の名称を問わず、法人から給与を受けている以上上記の事情から厚生年金保険と健康保険に加入しなければなりません。
しかし、社会保険に加入していない方は国民年金や国民健康保険の保険料を納めているというかもしれません。
確かにこれらも社会保険の一種ではありますが、個人事業主など向けのもので、法人で常時雇用される人が加入するものではありません。
つまり、これらに加入していない場合は義務に違反しており、法人名の公表のほか「6か月以下の懲役か50万円以下の罰金」が科される場合もあります。
一方で大きなメリットもあります。
厚生年金と健康保険の保険料は法人と個人で折半となります。
一方で国民年金と国民健康保険については一切経費になりません、もし経費にしている方がいたら即座に中止し2年以内分は法人に戻してください。
そのため、仮に保険料がともに10万円だったとしたら
・社保加入→5万円は法人経費、5万円は自分での支払い
・社保未加入→10万円全額自腹
ということになります。
厚生年金・健康保険の保険料はこちら(協会けんぽ)で確認できますので、法人所在地の都道府県のものを参照してください。
おそらく大部分の方は逆にご自身の負担が減ると思われます。
一方で、所得が大きいのにそれをごまかす形になってしまう方もいるはずです。
社会保険料への関心が高まっている中、正当な額を負担していないということが公になることは信用の失墜を招きます。
早めにご対応をいただくようお願いします。
今回は「宗教法人は住職等1人でやっているところであろうが社会保険の加入義務がある」ということをご認識ください。
次回は副業がある方向けのお話の予定です。