定例ブログと宗教法人の労働保険関連調査のお話
2025年12月1日
早いもので師走となりました。
寺のサイトにも書いた豆知識ですが「師走」は「僧侶も走り回るほど忙しい」というのは俗説だそうです。
当事務所は個人事業主としてやっているので、そろそろ年末のシメが必要です、税理士の先生にデータ作って投げるだけではありますが。
よく聞かれるのですが年末調整は税理士の独占業務です、社労士は給与計算までとなります。
お膳立てくらいまではできますが、正式なものは税理士の先生へお願いいたします。
逆に社会保険・労働保険に関する作業は社労士の独占業務なので、それはこちらへお願いいたします。
9月に開業してあっという間の年末です。
思ったほど社労士業務に注力できなかった感はあるのですが、なんとか顧問先ゼロで年を越さずに済みそうです。
社労士としての一番の大仕事は東京SR臨海ブロック研修で講師をさせていただいたことでしょうか。
色々と至らぬ点はありましたが、個人の経験としては非常に良いものでした。
あと、今年の仕事としては表題の労働保険の加入状況調査に対するアクションでしょうか。
おそらく都内で相当数の宗教法人に確認が行っているのですが、思ったほど関連の相談はありませんでした。
しかしながら、前回のブログにまとめた通りの条件ですと、ひっかかるところは多数あると見込まれます。
実際、問題アリの状況ながら対処をしていないところもあるようです。
おそらく今後も加入調査が定期的に行われることが見込まれます、状況の変化などで加入が必要になるケースもあるので現状の診断と今後の可能性についても見ておくことは必要だと思われます。
よくあるのはやはり
・住職世帯と副住職世帯の併存
・単発or定期的なヘルプ依頼
でしょうか。
特に注意なのは定期的に特定の人に留守番や法要の手伝いをしてもらっている場合、これは「常時雇用」扱いになるケースもあります。
たまに単発バイトに来てもらっている感覚の方もいるようですが、仮に単発だったとしてもその際に労災保険加入は必要なので間違いやすいポイントです。
これも前回の通りですが、さしたる額面ではないので信用失墜と天秤にかければスルーするのは得策ではありません、そもそも違法ですし。
また、労災保険は全額法人持ちなので収入が減ることもありません。
あと、わかりにくい点としては「同居の親族」と「生計同一」のところでしょうか。
私も不明確で同居のラインはどこになるのか、敷地内ならO.K.か、渡り廊下などで続いている必要があるかなど問い合わせましたが、東京都労働局の回答は「場所的観念より生計同一関係」そして「労基署の調査によって実態を見て判断」ということだそうです。
ここで出てくる「生計同一」ですが、定義については調べればすぐに出てきます、今回は国税庁のものを見てみましょう。
この「生計同一」という点だけに限れば同じ家に住んでいることは必要ありません。
たとえば、単身赴任のお父さんとお母さん・子、両親と離れて一人暮らしの大学生(仕送り有)も生計同一にはなります。
送金や援助が行われているかどうかという点がポイントになるようです。
この場合の金額は具体的に○○円以上などの縛りはなく、電気代を出しているなどでも認められます。
ただし、今回の労災保険加入に関しては大前提として「同居の親族」という条件がありますので、先の別居状態だと認められません。
逆に住民票が分けられているものの住所は敷地内別棟ながら同一で、住職世帯が副住職世帯の公共料金を出しているなどであれば生計同一が認められる可能性があります。
いずれにしろ、今回の調査で色々と前例ができると思われるのでそれに応じた対応が必要となってきます。
重ねてになりますが、労働保険に関しては「宗教法人の特殊性にかんがみて」のような通達などは見当たりません。
世間一般の企業はどんなに低リスクの業種であろうが基本的に労災保険に加入しています。
このような義務を、特に今回勧奨があった上で無視していることが公になれば、当然ながら社会的な信用が失墜するリスクも大いにあります。
そして、額面が大きくなりそうな厚生年金や健康保険のほう(狭義の社会保険)もクローズアップされ問題となる可能性もあります。
今まで意識していなかった問題だったとしても放置せずしっかりと対応をご検討ください。